国賠訴訟で勝訴判決を受け「真実が認められ、うれしい」と喜びを語る仙波敏郎巡査部長(右)=11日午後2時ごろ、県庁 県警の捜査費不正支出問題で内部告発したため不当に異動させられ精神的苦痛を受けたとして、仙波敏郎巡査部長(58)が県に慰謝料百万円を求めた国家賠償請求訴訟の判決が十一日、松山地裁であった。高橋正裁判長は告発会見直前の上司の説得行為、配置転換、勤勉手当の減額はいずれも違法で、これらが県警本部長も関与して行われたと認定。請求通り県側に百万円の支払いを命じた。
最大の争点だった配置転換への県警上層部の関与について、被告側は「地域課長の権限」と否定していたのに対し、高橋裁判長は「地域課長の権限のみに基づいて判断して行われたとは到底考えられない」と判断。
根拠に、地域課長が病欠した日に生活安全部長が異動内示▽異動先の通信指令室企画係新設や配置人員の決定は本部長の権限―などを挙げ、「県警本部長の関与を否定できない」と組織的に違法な配置転換が行われたと認定した。
仙波巡査部長が会見で告発した県警の捜査費不正支出問題については、北海道警など全国的に警察の裏金づくりが問題視され、大洲署でも不適切な会計処理が判明したことに加え、現職警察官の告発ということを総合的に判断し「告発内容の真実性を安易に否定できない」とし、会見に至った経緯、告発内容には公益性があると位置付けた。
その上で、県警側が会見前夜、仙波巡査部長を職場へ呼び出して会見中止を説得したり、当日の早朝に自宅を訪れて所在確認し、会見直前まで携帯電話に再三電話したりした点を「説得行為としては相当性の程度を超えており違法」と断じた。
提訴後に勤勉手当を減額した県警の対応を非難し、「原告の成績の評定を下げることは社会通念上著しく不合理」と違法性を認めた。
会見後の拳銃保管(取り上げ)措置は、仙波巡査部長が会見で「辞める時は死ぬ時」と発言したことを聞いた地域課長が精神状態を不安定と判断したり、会見で同巡査部長の顔が周知され、市民と接する鉄道警察隊勤務で不慮の事故が起きることを想定したことは「不合理とはいえず、拳銃保管は違法ではない」と、県側の主張を認めた。
閉廷後、仙波巡査部長は「裁判所が配置転換命令で県警本部長の関与を認めてくれたのがうれしかった。判決は警察の裏金根絶に向け、一石を投じる機会となった」と評価した。
十一日夕、海外出張先の中国から帰国した加戸知事は松山空港で「判決文を見ていないのではっきりとは分からないが、県警が適切な対応をとることになるだろう。人事異動の形式については反省すべきところもあったかなと思う。今後、県としてどうするかは県警の話を聞いてからの判断になる」と話した。
判決受け止め謝罪を
薦田伸夫支援弁護団長の話 県民から見ると当たり前の判決。県警側は控訴するというのであれば、恥の上塗りだ。判決を正面から受け止め、謝罪してほしい。
主張認められず残念
山崎幸夫県警首席監察官の話 県警の主張が認められなかった極めて厳しい判決であり、誠に残念。今後は判決内容を詳細に検討し、適切に対応したい。
【組織防衛 報復を指弾】
[解説] 県警の裏金づくりを告発会見した仙波敏郎巡査部長による国家賠償請求訴訟で松山地裁が十一日に下した判決は、配置転換に県警トップの本部長が関与していたことを認定し、県警側のほとんどの行為を「違法」と断じた。県警にとっては完全敗北を意味する。
判決は、県警幹部による会見中止の説得行為、配置転換、勤勉手当減額のいずれも県警側の主張をことごとく退け、原告側主張をほぼ認めた。唯一、拳銃保管(取り上げ)措置は「違法ではない」としたが「ほかの警察官に対する見せしめとの疑義が残る」と指摘。原告側の「内部告発への報復」との主張を全面的に受け入れたといえる。
今回の訴訟を振り返ると、県警側の言い分には「無理」があった。会見前後の一連の動きを「地域課長の権限で決め、実行した」と主張したが、地域課長のみに責任を押し付けているだけに映った。今回の判決は告発会見前後の一連の動きを指弾した形だが、その後の訴訟でも組織防衛を最重要視する県警の実像が透けて見えた。そのことに対する県民のマイナスイメージは計り知れない。
原告が告発した「一九七三年から九一年にかけ、上司から偽領収書づくりの指示を受けた」との内容についても、原告側は元北海道警幹部らを証人出廷させ、経験に基づいた信ぴょう性ある証言を引き出し、全国の警察組織に裏金がまん延し「愛媛も例外ではない」と明快に指摘した。
対して県警側は証人への反対尋問で裏金に関する質問を避け、告発内容も「確認できない」とだけ答弁するなど、消極姿勢が目立った。裏金問題を争点化することを避けた結果、判決は告発内容の真実性をにおわせる内容となった。
県警は捜査費不正支出問題について、組織的な裏金づくりや私的流用はないと説明してきた。だが今回判決によって、県民の「裏金の存在」に対する疑念はさらに深まり、現在進行中の捜査費不正支出に絡む他の訴訟にも大きな影響を及ぼすだろう。
(社会部・和泉太)