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安保法成立1年 疑念強まる現実直視し再議論を 2016年09月19日(月)

 自衛隊の海外での活動を飛躍的に拡大させる安全保障関連法の成立からきょうで1年。安倍政権と与党が民意に背を向け、戦後日本の安保政策の大転換となる法を、数の力で強引に成立させた暴挙を忘れるわけにはいかない。
 憲法9条の解釈を変更し、歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を容認した法は、先の大戦での惨禍を経て不戦を誓った平和憲法の理念や専守防衛の原則に反する。多くの憲法学者や元最高裁長官、元内閣法制局長が「違憲」と断じた法の内容や成立過程への疑問、不安は、今なお解消されていない。法が施行されたからといって終わりではない。諦めずにこの問題を問い続け、安保法の廃止を強く求めたい。
 安倍晋三首相は「国民に丁寧に説明する」と述べたが、約束を果たそうとしない。昨年は野党が求めた臨時国会を開かず、今年の通常国会で野党が廃止法案や対案を提出しても与党は審議に応じなかった。先週末、菅義偉官房長官は「国民の理解は進んでいる」と強弁したが、全国各地で違憲訴訟が提起されるなど、むしろ疑念が強まっている現実を直視する必要がある。
 安保法が運用段階に入ろうとしている。陸上自衛隊は新任務となった国連平和維持活動(PKO)の「駆け付け警護」の実動訓練を始めた。政権が参院選の影響を避けようと、訓練開始を先延ばしにしたのは明白。安保法の是非が選挙の争点になったとは到底言えず、与党の勝利で容認されたわけではないと肝に銘じてもらいたい。
 そもそも安保法は、どういう場合に自衛隊の活動を認めるかの判断基準が曖昧だ。集団的自衛権の行使は、国の存立が脅かされる明白な危険がある場合などに限られる。だが何が明白な危険かを、政府は「総合的に判断する」というばかりで明確にしていない。曖昧な基準は拡大解釈を可能にし、米国の要請に応じ自衛隊が歯止めなく海外へ派遣されることを危惧する。そんなリスクがつきまとう法は容認できない。
 安保法の必要性も改めて考えたい。首相は法制化で「日米同盟が強化され、日本を守る抑止力が高まった」と述べたが、その効果には疑問符が付く。中国は沖縄県・尖閣諸島周辺での公船の航行を常態化し、軍艦を初めて接続水域に入れた。北朝鮮は核実験やミサイル発射をやめようとしない。過激な挑発を繰り返す相手に、警戒の度を高めれば、軍拡競争がエスカレートする懸念が強まる。粘り強い外交交渉による緊張緩和に力を入れなければなるまい。
 臨時国会が来週召集される。野党は共闘し廃止を主張する構え。さまざまな論点が掘り下げられずに成立した法であり、与野党は安保政策の議論をやり直す必要がある。安倍政権は真摯しんしな姿勢で懸念に対する説明を尽くすことが、主権者である国民への責務だ。