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特集俳句甲子園 20122012年09月04日(火)付 愛媛新聞

「絶句するような俳句は若者にしか詠めない」と若手俳人に期待を込める筑紫磐井さん

出身俳人の挑戦(5) 若手への期待  筑紫磐井

 若手俳人が注目される大きなきっかけとなったのは「新撰21」(2009年、邑書林)の出版だった。同書は、40歳未満で2000年以前に句集を出していない若手21人を選び、各100句を紹介。神野紗希さんや佐藤文香さん、谷雄介さんら俳句甲子園出身者6人も名を連ねる。編者の一人である筑紫磐井さん(62)に同書の狙いや若手への期待などを聞いた。(聞き手・高橋正剛)

◆俳句史を見ると、新人が新風を送り込んできた。◆
 俳句はこれまで、新人が世に出てくることで脚光を浴びてきた。正岡子規や高浜虚子も新人だった。
 戦後では、終戦後すぐに金子兜太さんや飯田龍太らビッグネームが一斉に登場した。彼らが中堅になると、鷹羽狩行さんや稲畑汀子さんたちが現れる。
 次に長谷川櫂さんや小澤實さんら戦後世代がデビューする。彼らの世代の6〜7割は「処女句集シリーズ」(牧羊社)で取り上げられた。同シリーズは新人約200人の句集を出したが、1993年ごろ終わった。その後、まとまった形での新人の登場は途切れていた。

◆「新撰21」出版の背景には、新たな世代の出現があった。◆
 その間に俳句甲子園が始まり、芝不器男俳句新人賞(愛媛県文化振興財団など主催)も登竜門として定着した。ともに年齢制限があり、独自性のある若者が脚光を浴びる場ができた。プロを目指す出身者も出てきた。新人は集団で紹介しないとなかなか世に出られないと思い、まとめて取り上げた。俳句関連の書籍としてはかつてないほど大ヒットし、年齢幅を広げた続編も2冊出た。
 一方、甲子園で頑張ったのに俳句を続けていない人も多い。「新撰21」のような、彼らが再挑戦できる場を今後も用意する必要がある。

◆人選は、伝統系から前衛系まで幅広い。◆
 半分くらいは「変な人」を選んだ。無季でも面白ければいいし、見当違いな季語の使い方をしていて結社の選句では落とされるような人もいる。今のよどんだ俳句界を変えるには「変な人」の活躍が必要だ。ばくちで入れた人もいるが、可能性のない人は選んでいない。

◆選ばれたことを励みにしている人も多い。結社にいれば主宰に認められることで満足感が得られるが、結社に入っていない若手はモチベーションを保てるか。◆
 「角川俳句賞」を狙う人が多い。公募賞としては最も知名度が高く歴史もあるからだ。しかし、取った後どうするか。
 どこに「安住の地」を求めているのか不安も感じる。句の評価を他人に任せると難しい。以前は、人が何と言おうとわが道を行く俳人もいた。自分で「これでいいんだ」という評価基準を見つけられるかどうかだ。

◆若手へのメッセージは。◆
 彼らがつぶれると俳句は永久につぶれる。再生産するからこそ、俳句は続いてきた。大いに頑張ってほしい。
 「『大人』の言うことは間違っている」と思えばいい。裏返せば、「大人」が詠んでいるような句は作ってほしくない。「えっ」と絶句するような作品は、若い世代でないと詠めない。
 ただ、俳句史の勉強をもっとしてほしい。歴史をわきまえないといま作っている句が優れているか分からない。過去と同じことをしてもしょうがないし、同世代から「面白い」と言われるだけでは深みがない。歴史を勉強すれば評論もできるし、「大人」をやっつけることもできる。=おわり

【つくし・ばんせい】 1950年、東京都生まれ。72年に結社「沖」入会。現在、同人誌「豈」発行人。実作のほか、評論も活発に行う。句集に「婆伽梵」「筑紫磐井集」、評論集に「飯田龍太の彼方へ」「定型詩学の原理」など。

   
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