HOME「誓いのコイン」ロシア公演特集
アクリートくらぶガイドアクリートくらぶログイン
子規の一日一句愛媛の天気Yahoo!

「誓いのコイン」ロシア公演特集2012年09月24日(月)付 愛媛新聞

直前稽古で演出助手や振付師らから受けたアドバイスを、台本と照らし合わせ頭に入れる佐伯静香=10日午後、東京都荒川区

心の国境を越えて[4] 劇場が次に進むために 佐伯静香 サチ役

 「向こうは言葉が分からないんだから、もっと体全体で感情表現しなきゃ通じない」。ロシア出発直前、都内で開かれた直前稽古で、演出助手が厳しく指摘する。佐伯静香(30)=西条市丹原町出身=はうなずき、ノートに言葉を書きとどめる。稽古開始前、初の海外公演に不安を口にする佐伯だったが、約半年ぶりに一通りのシーンをこなし、「自分ならできる」と自信が生まれていた。
 モスクワで1回、オレンブルクで3回開催された坊っちゃん劇場(東温市見奈良)の「誓いのコイン」ロシア公演。ロシア人捕虜ニコライと国境を超えた恋に落ちるヒロイン、看護師のサチ役は、坊っちゃん劇場での約1年間の公演のうち、前半を演じた滝香織(28)と後半を演じた佐伯がそれぞれ2回ずつ演じた。ニコライを演じた四宮貴久(35)は前半だけだったため、佐伯との共演は初めてだった。
 6月末の集中練習でもブランクの長い滝が優先され、「四宮とほとんど合わせられなかった」。不安の原因はそこにあった。2日間の直前稽古が終わり、「指導もすんなりのみ込めた。四宮の演技にも触れ、楽しみな気持ちに変わった」と佐伯はすっきりとした表情だった。
 県出身役者として初めて坊っちゃん劇場の主役を務めた佐伯。ミュージカル女優の道を決めたのは8歳のとき。東京で観劇した故本田美奈子さん主演の「ミスサイゴン」がきっかけだ。迫真の演技に衝撃を受け、ミュージカル女優になろうと幼心に決めた。地元高校卒業後も思いは変わらず「舞台芸術は東京が中心。他に選択肢はない」と単身上京した。
 水道橋の専門学校ミュージカル学科を経て劇団四季に入団したが、芝居を本格的に勉強したいと約5年で退団。その後3年間、アルバイトをしながら舞台中心の日々を過ごしていたが、自分に自信が持てない状況に陥った。「何をやってもうまくいかない。人前に立ちたくなかった。もう役者を辞めようと思っていた」。母親から地元・愛媛にできた常設劇場のオーディションを知ったのはそんなときだった。
 「誓いのコイン」の主役に選ばれ約10年ぶりの帰郷。坊っちゃん劇場での生活は「毎日、舞台のことだけに打ち込める。自分を見つめ直す、かけがえのない時間になった」。同時に、東京でミュージカルと出合い、役者として活動する佐伯には「愛媛が変わった」と敏感に感じたという。「いつでも子供たちに生の感動を与えられる劇場が地域にあるってどこにもない。本当にすごいこと」。舞台を見た中学生から真剣な表情で「ミュージカル俳優になりたい」と相談されることも。
 自分たちの舞台を見て、夢を描く子供たちがいる。「坊っちゃん劇場が次のステップに進むためにも、ロシア公演を何としても成功させたい」と強く思う。佐伯は役者人生の集大成のつもりでロシア公演に挑んだ。「時間がある限り自分の中のサチと対話を続ける。集中力を最大限に高めて臨みたい」(末光徹)

   
Copyright(c) The Ehime Shimbun Co.,Ltd. All rights reserved.
掲載している記事、写真などを許可なく転載、複製などに利用することはできません。
プライバシーポリシー著作権・リンク
愛媛新聞社のウェブサイトについてのご意見は、氏名・連絡先を明記のうえ、愛媛新聞社へ。