秋を迎えるしまなみの海を楽しむ旅
”小さな太陽”をいただきます!
急に訪れた前日までの寒波で激しく荒れていたしまなみの海。寒々しい鈍色をしていた海も今日は一転し、まるで嘘のように穏やかで明るく輝いている。褪せたような色合いだった風景は、太陽を浴びて鮮やかで、しかも秋独特の透明感のある爽やかな空気を纏っていた。3月から始まった「しまなみキラリ」ツアー、最終回となる今回(11月3日)は最高の行楽日和の中でスタートを切った。“体験”して楽しむ、がこのツアーの特徴であることは今さら言うまでもないことだが、今回はしまなみの特産のひとつであるミカン狩りから始まった。
水はけのよい斜面で太陽の光をいっぱい浴びたミカンは味がいい。「潮風に当たると酸味が消えて甘味が増すんよ」と大島のミカン農園のおじさんが教えてくれた。島にはほとんど平地がない。逆にそれほど高くなく、人が踏み込め、しかも日当りが良くて潮風があたる斜面はたくさんある。まるでミカン天国だ。小さな太陽のようにも見えるオレンジ色の果実は、寒さが増し次第に色彩を失っていく風景に温かさを残してくれている。
柑橘は種類によって違いはあれど、一般的に晩秋から初春にかけて旬を迎える。「コタツにミカン」の定番でもある“温州ミカン”の早生が枝も折れんばかりにたわわに実った木々の間の小道を登り、甘そうな果実を探す。果樹園の周辺には小さな実をつけたヤマブドウやミカンと同じ色をしたカラスウリ、名前も知れぬ桃色の花、赤や黄色に色付いた野草が生い茂り、秋の気配が満ちていた。
「南向きで日光がいっぱい当たる枝の実が甘いんよ」というアドバイスのもと、美味しそうな実を目利きしながら枝から次々ともぎ取っていく。そして、その場で皮を剥いて口に放り込むと、瑞々しくて甘い果汁が口いっぱいに広がる。
そういえば幼かった頃、ミカンを食べ始めると止まらずに10個くらい一度に平らげてしまっていたことを思い出した。ツアーに参加していた男の子は、「ミカン大好きなんよ。毎日食べても飽きんもん」と顔中笑顔にして頬張っていた。
はしからはしまで見渡せる
ミカンでお腹いっぱいになってしまった。次は昼食だとわかっていながら止めることができなかった。しかし、昼食の七厘バーベキューのネタを見ると、急に別腹ができてしまう。下田水港の“よしうみいきいき館”で、近くで取れた貝や海老を豪快に丸焼きするのだ。黄色や紫色をした緋扇貝を真っ赤に熾った炭火に載せると、まだ活きている貝はパカパカと開いたり閉じたり、栄螺はウニュウニュと蠢いて、やがて蓋の間から貝汁がぶくぶくと噴き上がってくる。灰色だった海老は火の熱を吸収するほどに赤く染まっていく。目の前で焼き上がっていく様子を見て楽しみ、味わって幸せになる。みんなの笑顔も満開だ。
秋空はどこまでも高く遠く、山々の稜線までくっきりと、水平線は遥か彼方まで見晴らすことができる。「こんなに天気がよくて遠くまできれいに見える日は年に何回かしかないんよ」と、亀老山展望台の売店の人も言う。日差しは眩しいけれど、夏のようなギラギラした感じではなく、優しくて明るい。そんな中で、海も空も山も、真っ白にそびえる来島海峡大橋も、すべてが本来の色のまま、コントラストも鮮やかに目の中に飛び込んできたのだ。360°のパノラマ風景がハイビジョン画像のようにくっきりと細部まで、そして遠くまで広がっている。「新居浜市あたりまで見えとるわ」、「四国中央市の製紙工場の煙突じゃない?」と、賑やかだ。「あ、あれ!あれ瀬戸大橋じゃない?」、と誰かが叫んだ。東の方に連なる四国本土の山並みの先に、瀬戸大橋の白い主塔が小さく、しかしはっきりと見えている。「自分が立っているこの場所は広い世界の中にあるんだな」ということを初めて“目”で見て体感し、そして感動した。
“しまなみ”にしばしの別れを…
しまなみキラリ、最後のメニューは「急流観潮船」に乗り込んでの急流体験だ。日本三大急流のひとつである来島海峡は、最大時には10ノットにもなる潮流が一日に4回方向を変える海の難所で、“順中逆西”というここだけの航法が定められているほど。乗り込んだ船は舷側が低く、手を伸ばせば海面に手が届く。つまり、自分の体が海面すれすれに移動していくのだ。潮の流れに負けない強力なエンジンがうなりを上げ、まずは来島海峡大橋を固定するアンカーブロックの真下まで行く。橋の上からはではよく分からなかったが、海上から見上げると想像を絶するほど大きなコンクリートの塊だ。そして、武志島→中渡島→馬島→小島→来島と橋脚近くにある島々を巡りながら、島の特徴や歴史を説明してくれる船頭さんの話に耳を傾ける。波止浜ドックでは林立する巨大なクレーンと、間近から見上げる建造中の大型タンカーやコンテナ船が何隻も舳先を並べるダイナミックな光景に興奮する。やがて船は最大の見どころ、複雑に潮流が渦巻くポジションへと向かった。
海面がまるで大きな丸い盆に水を満たしたように波ひとつなく、鏡のようになめらかに盛り上がっている。しかしこぼれ出すように流れ落ちる水は、周囲に寄せてくる潮流とぶつかりあって盆の縁に小刻みに波を立てている。正反対の向きに流れる潮流が絡まり合い、そこかしこに気まぐれな大渦をつくり出しては消え、また思いもよらぬ場所に渦を巻く。船頭さんが船のエンジンを切るとゆっくりと船は向きを変え、次第にくるくると回転し始めた。うねりに乗り上げて大きく傾き、驚怖に悲鳴を上げ、そして流れの早さに歓声を上げる。最後のツアーにしまなみの海はすべての表情を見せてくれているようだった。
名残りは尽きず、四国本土に帰ってきてからしまなみの島々を振り返った。石蕗の黄色い花が咲き乱れる大角海浜公園から別れを告げる一行を見送るように、夕日が空と雲を真っ赤に染め上げながら沈んでゆく。“また必ず来るから。ありがとう…”そう心の中でつぶやいた。
燃えるような夕日が静かに沈んでいく。最後のツアーの最後の時間…
※この「しまなみキラリ」の企画はピカラタウンでもご覧いただけます。
■みかん狩り 重農園
(要予約) TEL:0897-84-2831
■海鮮七厘バーベキュー 道の駅 よしうみいきいき館
TEL : 0897-84-3710
■日本三大急流「急流観潮船」
コース:下田水港==武志島==中渡島==馬島==小島==来島
==波止浜湾==下田水港
所要時間:約40分
営業時間:午前9時頃~午後4時頃
定休日:年中無休 (ただし、12月~2月は団体予約のみ)
料金:一般(中学生以上):1,000円、小学生:500円、小学生未満:無料
※団体割引(10名以上)10%
※しまなみ各施設レストラン(いきいき館・ローズ館・マリンオアシスはかた・多々羅しまなみ公園)および多々羅温泉利用者 10%
受付:道の駅 よしうみいきいき館(今治市吉海町名4520-2)
TEL : 0897-84-3710
↓こちらから体験の様子がご覧いただけます
http://www.imabari-shimanami.jp/
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